1998の灯~パラレルワールドからの贈り物~前編

君は覚えているかい?

知らない人さえいるだろう。

まだ日本がW杯に出た事が無かった1998年の事を。

そしてその先頭で夢の舞台に立つべき一人の男がいた事を。

 

もう、23年前の事。

未だにそんな話している人はいないだろう。

それは化石のように感じられるほど、遠い過去のストーリー。

今ここで、昨日まで遠く離れていた俺の心を引き寄せたのは

意外にも、メルカリというタイムマシーンだった。

 

記憶の彼方に散らばったパズルが、時を経て一つに繋がっていくとき、

1998の灯が真実を照らし出す・・・

 

「新たな途」

 

最近俺はメルカリにハマっている。

(意外と楽しいですよね)

売れると本当嬉しい。もうその人と友達になろうかと思うぐらい。

(確かに!)

 

第一印象が良かった。

初めてのメルカリで、カズがクロアチアにいた時のユニフォームが掲載したとたん2分で売れたんだ。

試合開始2分でゴールを決められるなんて、やっぱカズはすごいね。

当時俺が信じていたカズへの想いが、そのユニフォームを引き寄せ

20年以上経てそれを手放すときでさえ、同じ気持ちを呼び起こした。

想いは確かに具現化し、そして今去っていった・・・

そう、現在54歳を迎えたカズへの想いがついに冷めていき

現実でも事象となって俺の前に現れる事になったんだ。

 

その後のメルカリワークは順調に見えたものの

20年前のギブソンのピックアップが売れた後は、停滞期に入っていってしまった。

所謂(いわゆる)、得点力不足である。

ああ・・・何か少しずつ・・・似てる・・・

1998年W杯フランス最終予選初戦6-3でウズベキスタンに勝ったあの試合・・・

その後、揺らぐ僅かな光を目指してた、夜明け前の長い闘い・・・

 

絶好調のカズが4ゴールを決めた。狂喜乱舞。ハイテンションナイト。

1点目 盟友井原が倒されたPKは、力強くゆっくりとカズ!

2点目 ショートカウンターからのオフサイドを気にしたコミカルなストップ&ゴー

相馬が溜めて最後はセンターでカズ!

3点目 プレッシングで相手を追い詰め、西澤のカットから中央へ切り込んで

大地を駆けるライオンの様にカズ!

4点目 右サイド中西からのふわっとしたボールをドフリーで胸トラップミス

しかし終わらない。

無理やり足を伸ばし最後は左足でカズ!

 

気付けば俺の部屋にはメルカリポイント600円で買った、1997年9月8日月曜日

試合翌日の日刊スポーツとスポーツ報知があった・・・

いつの間に!

断捨離して空いた俺の心に、新たな途が敷かれ始めていた。

 

パラレルワールドの存在」

 

ある日メルカリを見ると、エンジェルナンバー22,222円で「それ」は売っていた。

いいね!を押した。

ただそれだけの事、買う気はまったく無かった・・・

そして「それ」は数日後、16,500円になって俺を誘った。

俺の心が日を増す事に青く、碧く染まっていく。

(それ絶対買う流れですね)

 

そう、目の前に現れた「それ」はウズベキスタン戦の翌年

1998年W杯でカズが着ていたはずの幻のユニフォームだった。

 

しかし俺は3時間のバイト。しかも38歳、独身。

(笑える?)

阿部寛の「結婚できない男」をリアルタイムで見て

うんうん言っていたタイプの人間だ。

「23年前が~」「幻の~」言ってる場合じゃないだろと誰もが思うだろう。

自分でも思った。

そんな中また値下がりして、今度は13,500円。ライバルは3人。

明日まだ売っていたら買おうかな、俺は迷いながら眠りについた。

 

その晩こんな夢を見た。

どこかの押入れに黒い鳥が閉じ込められている・・・ 

それは船に乗ってやってくるのではない・・・

 

押入れの黒い鳥は、日本代表のエンブレム八咫烏(ヤタガラス)が仕舞ってある

という意味だ。

船ではないは、場所的にも精神的にも、もう俺の近くに来ている事を示している。

しかし1998年幻版を買うにはまだ迷う理由があった。

 

ここからかなり細かい話をする。

寺門〇モンのコレクションの話の様にマニアックな話になるだろう。

(深夜にやっていたあれですね)

 

まず1997年伝説版というものがある。

ウズベキスタン戦で着ていたこのユニフォームはアディダス

ネームが黄色いデカ文字になっている。

本当はこれが欲しかったが新品で23,500円から値上がりし

迷っていたらおいおい24,500円になっていた。

(上がるパターンあり?)

と兎に角💦ほとんど出回っていないモデルで、将来100万円はするだろう。

 

一方1998年幻版はアシックスで2種類存在している。

一つは、1998年6月の大会前までで、選考中のためネームが入っていなかった。

もう一つは、大会モデルで胸に黄色でWORLD CUP FRANCE 98とかいてあり

ネームは白いデカ文字だった。

 

今回俺とご縁があったのは、1998年大会前モデルでネームが入っていて

白いデカ文字。

少し違う所がネームの間の隙間が空いてない事だ。

リアルだと「K A Z U」

これは[KAZU]

またネーム、背番号に欠けがある。

 

まとめると大会モデルではない。

ネームがリアルと少し違う。

年季が入っている。

細かいがここで悩んでいた。

折角ならカズがW杯で着ていたはずの完全なユニフォームが欲しいと・・・

 

だが考えてみるとそれが存在しなくても不思議ではない。

当時カズはW杯に行っていない。

そもそもそれが幻だという事を忘れてはいまいか。

無いものを手にしようとしていたんだ。

 

しかし、導かれるようにそれはそこにあった。

そして、俺がその碧さに引き込まれてからこの世界の何かが変わった。

当時のサポーターの願いは幻を生み出し、23年の時を経た今、俺と重なっていく。

少し違うデフォルト・・・もう一つの違う世界で・・・

傷だらけのユニフォーム・・・聖痕・・・

カズは確かにW杯に出たんだ。

 

2日後、幻のユニフォームはらくらくメルカリ便で俺の元に届いた。

 

中編へ続く