「混沌のアジア予選」
今でもそうだ。
W杯予選、アジアの険しい道のりを歩む戦士達を初めは世間も応援する。
ところが上手くいかなくなると次第に一部から批判が始まる。
自分は何も戦っていないのに、批判する事が正しいとさえ思っている人もいる。
特にネットでは何故か、絶対数が多いはずの擁護派より批判意見の方が多い。
「選手を代えれば良い」「4バックなら勝てた」
「監督が責任を取って辞めるのが海外では当たり前」
なんてよく聞く。
そういうのってサッカーだけじゃないけど俺は言いたい。
自分達は出来んのかい?
顔と名前出して戦えないなら言うな。
絶対出来ないだろ。
批判言うなら応援しろよ。
ネガティブじゃ何も生み出せやしない。
むしろ・・・
そもそも俺を含めて、世間ってやつはサッカーを良くを知らない。
(別に良いんじゃないですか先生)
中東や東南アジアといっても、大の男達が本気でやるわけだから
ギリギリの戦いになるという事は必然だ。
つまりサッカーの上手い下手以前の問題で、ほとんど椅子取りゲーム。
全盛期のカズや、中田、俊輔、大黒がいてもそう簡単ではないはず。
敵はイングランドでも、ブラジルでもない。
韓国のあいつが・・・
アウェイのUAE・・・
50度に上り狂う中東の最高気温は世界平均の約2倍!
精神力、戦術、社会情勢、アウェイへの順応、総力戦で実力差も乗り越えていけ!
今も昔も変わらないW杯アジア予選の真の面白さがそこにある。
そうあの日々も・・・
「1998の灯」
ここでもう一度、1998年W杯最終予選に話を向けよう。
あれは今よりもっとハードで、ロックな・・・
17世紀なんじゃないかと言いたくなるほどのカオスで
日本が満ち溢れていった💦
ウズベキスタン戦は良かった。
上手くいっているときは皆、性格が良いものだ。
でも駄目なときほど人間には真価が問われるだろう。
実際、結果はだんだん上手くいかなくなってしまった。
案の定、メディアを中心に性格に問題をきたす人が現れていった・・・
アウェイUAE 0ー0 (灼熱のピッチで悪くはなかったが)
ホーム韓国 1-2 (84分、87分失点で逆転負け、エースカズ尾てい骨負傷)
アウェイカザフスタン 1ー1 (エースカズ強行出場も89分に失点で振り出し)
攻撃陣の不甲斐なさ、終了間際の失点にDF陣はいら立ち
城などの出られない若手の不満はピークに達していた。
そして加茂監督が更迭(こうてつ)された。
この瞬間から、まだ監督経験のない岡田体制へと大きく流れが変わる事になった。
この新陳代謝はカズにとって、城との世代交代をも意味していく事になる。
その後の岡ちゃんジャパンは
アウェイウズベキスタン 1ー1(勝ち点1がやっと)
ホームUAE 1ー1 (勝ち点1がやっと)
内容は悪くなかったが結果が出なかった。
アウェイ韓国 2ー0 (FWよりMFがゴールする、岡田体制の理想的ゴール)
ホームカザフスタン 5ー1 (結果が伴ってきた)
中立地ジョホールバル イラン3ー2(カズ絶不調からの→城絶好調、おまけで岡野)
何とか持ち直した岡ちゃんジャパンは史上初のW杯出場を決めた。
これは歴史の壁を越えるという本当に凄い出来事だった。
一方でFWにスペースを作る動きを求める事で、カズの無得点が続いていた。
この戦術の変更には、無意識レベルで正当化された鬼が監督の中にいたのだと
俺は思う。
そして事情を知らない世間の思考がついには形となり混ざり合い
得体のしれない黒い影となって、この世に生み出されてしまったんだ。
カズを外せ・・・外せ・・・
所謂(いわゆる)、カズ不要論である。
敵が誰なのかさえも見失う、群衆心理が働いていた。
そしてW杯は始まり、終った。
アルゼンチン、クロアチアに善戦も0ー1、ジャマイカに1ー2で予選敗退。
特に今度はエース城を絶不調が襲った。もうどうしようもなかった。
はっきり言って「誰も悪くない」が正解だろう。
これが夢に見たW杯、実際には夢ではなく現実が待っていた。
W杯予選ではカズより城という世論の思考が具現化され、
W杯本大会ではやっぱりカズがいなきゃ駄目なんだという現実に晒された。
日本中が大きな思考の渦潮にのまれて、最後は凪になった。
ワ~ってなって、一気にス~ってなった。
ジャマイカ戦を終えてピッチに墜ちた盟友井原の背中には
カズよ何故いてくれないんだと書いてある様な、そんな気がしていた。
後編へ続く