俺は実家暮らし
千葉県の田舎でも都会でも無いような、自然と町が同居する世界で
ザリガニを釣ったり、友達とスーパーファミコンをして俺は育った
今でも俺はこの町と家が大好きで、二階の窓際の部屋が永住の地
真ん中の部屋は今は誰も使っていなくて
大きな三面鏡の前で髪をセットしたり、物を置いたりして使っている
結婚して出て行くまでは、その部屋には姉が住んでいた
今回の話はその部屋に纏わる、少し怖い話である・・・
Lv14 <謎の生物「パタパタ」>
2020年、あれは確か春だったと思う
ある日俺がその部屋を歩いていると、床の一部から音がする箇所がある事に気付いた
「ミシッ」とか「カタカタ」とかそんな感じの音だ
ただし今回のは正確に言うと「パタパタ」だった
床の音にしては、何か・・・違うような気もする
でも床を確かめる度にそこからは「パタパタ」、「パタパタ」・・・
そんな音が聞こえてくるんだ
次の日も俺はその場所に行き床を踏む
「パタパタ」、「パタパタ」・・・
段々、床を踏むのが楽しくなってきていた
「また明日もパタパタをやろう」
(先生、仕事して下さい)
しかし、それから一週間経ったときだった
いつものように床を踏むと・・・
「・・・」
「パタパタ」
ん?
何かタイミング違くない?
というか踏む、踏まないに関係無くない?
けれどそこには何かがいる気配がする
その夜は、うーんと考えながら眠りについた・・・
「僕を出して・・・」
「まだ生きている・・・」
「僕には行かなきゃいけない・・・場所が・・・」
暗闇の中、必死で叫ぶ声なき声は、誰の耳にも届く事は無かった
しかし、次の日の朝・・・!
朝、俺が起きてその部屋に行くと、窓のところで何かが大暴れしている💦
これは何事だ?
一体、何がどうしたというのか!
良く見てみると、カーテンと窓の隙間10センチのところで
「パタパタ」いや
「バタバタ」している動物がいる
兎に角、何かは知らないけれど出してやらねばと窓を開けると
そこから一羽の燕が、大空に羽ばたいて行くのが見えた
そう「パタパタ」の正体は燕だった・・・
本当はずっと、天井の方でパタパタ飛んでいたのに
一週間もすぐそばに居たのに
下ばかり見ていた俺は、上に居た燕に気付けなかったんだ
俺は一週間ほど前、網戸を閉めていない日があった事を思い出した
燕はそこから入って来たんだ
しかしその後は窓を開けても、網戸は閉めたままになってしまい・・・
「一週間、飲まず食わずにさせてしまってごめん」
俺は燕に謝った
そういえば犬を飼っていたときは、毎年のように来てくれたよな
けれどあれ以来・・・
俺は南の空を見上げて
遠くフィリピン、ジャワ島へと飛んでいく燕に思いを馳せた・・・
「燕」(Hirundo rustica)
日本で目にする燕は主にツバメ、イワツバメ、コシアカツバメの三種で
民家にやってくるものは、殆どツバメだという
古来から日本では、燕が訪れた家には幸福が招かれると信じられ
農作物の守り神としても大切にされてきた
いわば、人間と共存してきた家族のような存在
しかし現在、住環境、温暖化、河川の汚れなどが原因で
燕を含めた動植物全体に、大幅な種の減少が確認されている
自然淘汰では無く、これはきっと人間社会によるものだろう
生態系が乱れると、食物連鎖のスパイラルが壊れてしまう
何かが欠けると、他の何かが・・・
それは、崩れ落ちるパズルのように・・・
ツバメは減少種(神奈川県)
コシアカツバメは絶滅危惧種1類(日本全域)
として記載されている・・・
END