Lv18 近くて遠いカーテンの向こう側へ

 

社会はいつの間に、こんなにも閉鎖的で保守的になってしまったのだろうか

プライバシー第一主義のようなものが、国家権力の如く堂々と振る舞って久しい

だから、昔からよく言う”お隣にお醤油を借りに行く”なんてことには

実際なったことも無いし、聞いたことさえも無い

いつか巡り合いたい、密かな夢のひとつではあるのだが……

 

Lv18 [近くて遠いカーテンの向こう側へ]

 

六年ほど前だろうか

近所のショッピングモールで買ったレースのカーテンは

真っ白で、家の中から外の景色がほとんど見えない

それでも、外側の糸が光で反射する”ミラー作用”により

外からは絶対に見えないという点に、当時はやけに価値を感じていた

 

しかし、現代の日本人の秘密主義というものはどうも偏っている気がする

「守れ守れ」と、植え付けられているようにも感じてしまうほどに

不安が消費を促すなんて話も、どこかで聞いたことがあるような無いような

 

令和の時代になっても、それが変わることはないだろう

相変わらず世の中は、何をしようとしてもいつでも最初に

あのひどく長い、プライバシーポリシーへの同意を求めてくるのだから

心配症の俺は仕方なく、全部スクロールして読む羽目になるのだが……

 

そう、世の中は常に安心感を求めている

けれど、必要以上に何かを守ろうとする思いは、外からだけでなく

家の中からも外を見ることのできない壁となって、姿を現してしまうのだ

 

この六月、俺は家の中からも”外の景色を楽しめる”レースのカーテンに代えた

それは、昔の人のように、力まず、全てを優しく受け入れて

そんな、心の施錠を外すという境地に至ることが出来たからなのだろう

 

今では風が吹くたびに、カーテンを靡かせる何かがそこにいる

そうだ、この部屋には白い龍が宿ったのだ……!

 

END